2018.3.30 本当に大事なものは目には見えないの◎

photo by yuji kazama
 先週末は横浜を拠点に多様な文化的ルーツを持つ子どもたちを対象に英語でアートのワークショップを開催しているLittle Artist League Yokohamaさんに春の特別イベントのゲスト講師として呼んでいただき、英語版キセツクラシの会〜春を言祝ぐ〜「Celebrate Spring ~the art of Shitsurai~」という会を開かせていただきました。
 
 今回は初の英語を話す子どもたちとそのお父さんお母さん向けに英語での開催ということで、私がしつらいというものを通して、一番大切にしていることを改めて、じっくり考える機会にもなりました。

 いつも子ども向けの会で私が気をつけているのは「語りすぎない」ということ。大人のためのキセツクラシの会では、一つ一つの素材やその形や色に込められたメッセージ、その文化的背景についてじっくり語る部分も、子どもには「語りすぎない」。
それは先入観なしに、まずは触れて感じて、その質感そのままを幸せな記憶として残して欲しいから。
 今回は「日本の文化の紹介」としてお伝えすることにも一つ意義があるということで、本当にピンポイントで本当に伝えたいところのみを、最大限にシンプルで完結な言葉でお伝えする努力をしました。はじめは「う〜ん。。。」と考え込んだのですが、この機会をいただいたおかげでとてもシンプルに、私がキセツクラシの会で行っていることの核心部分を再確認することができました。
 親子向けに年2回開催しているキセツクラシの会は毎回、自然の中での宝探しというアクティビティからはじまり、そこで見つけた宝物をしつらいという形で表現するという一連の流れで進めていきますが、自然の中での宝探しは、ただ自然に五感で触れるというだけでなく、「あなたの心の声をあなたの代わりに語ってくれる宝物を自然の中から見つけ出す営みであるということ。」「一人一人が自ら見つけ出したそれぞれにスペシャルな宝物で形作られたしつらいは、自然とその人の人となりを表し、それだけでそれぞれに美しく生き生きと輝き、なによりも雄弁に美しいあなた自身を語ってくれるのだということ。」「色がきれいだとか、バランスがいいとか、そんなことでなく、美しいのはただただあなた自身であるということ。」
 こどもたちのしつらいではね。大抵彼ら彼女らの一番大事な宝物は葉っぱの下とかに隠されていました。ふふふ。
 おそらく、お父さんお母さん方は、こどもたちのびっくりするほど素晴らしいしつらいを目にして。気づいていただけたでしょう。隠されていても隠しきれないほとばしる子どものパワーのすごさ。美しさ。
 この日は、おひさまはきらきら◎ぽかぽか◎あたたかで◎新芽もあちこちで芽吹き、赤白黄色ピンク紫・・・色とりどりの花が咲き、桜の花も一斉に開き・・・◎本当に素晴らしい陽気◎
 子どもたちは五感でその素晴らしい今をのびのびと感じ、日本の文化であるしつらいをそれぞれの感性で思いっきり楽しんでくれました。子どもたちはあの日のあのひと時を楽しいきらきらした春の幸せな記憶としてただ彼らの心に残してくれればそれでいい◎彼らはすでにそのままですばらしい。
 彼らのすばらしいしつらいは、むしろ大人の目の方を目覚めさせてくれるのかもしれません。
 この日のことを改めて思うと、レイチェル・カーソンの著書「センス・オブ・ワンダー」のこの一節を思わずにはいられません。
「子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激に満ち溢れています。残念なことに、私たちの多くは大人になるまえに澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。
 もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」を授けてほしいとたのむでしょう。
 この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです。
 妖精の力にたよらないで、生まれつきそなわっている子どもの「センス・オブ・ワンダー」をいつも新鮮にたもちつづけるためには、わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもといっしょに再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる必要があります。
 多くの親は、熱心で繊細な子どもの好奇心にふれるたびに、さまざまな生きものたちが住む複雑な自然界について自分がなにも知らないことに気がつき、しばしば、どうしてよいかわからなくなります。そして、「自分の子どもに自然のことを教えるなんて、どうしたらできるというのでしょう。わたしは、そこにいる鳥の名前すら知らないのに!」と嘆きの声をあげるのです。
 わたしは、こどもにとっても、どのようにして子どもを教育すべきか頭をなやませている親にとっても、「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要でないと固く信じています。
 子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生みだす種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。  幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。
 美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものにふれたときの感激、思いやり、憐れみ、賛嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとたびよびさまされると、次はその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになります。そのようにして見つけだした知識は、しっかり身につきます。
 消化する能力がまだそなわっていない子どもに、事実をうのみにさせるよりも、むしろ子どもが知りたがるような道を切りひらいてやることのほうがどんなにたいせつであるかわかりません。」 〜「センス・オブ・ワンダー」レイチェル・カーソン著 より
 しつらいを子どもと楽しむということ。ってまさにこういうことだな。子どもだけでなく、しつらいを日々の暮らしの中に取り入れることも。まさにこういうことだな。
 Shitsurai is a long practiced Japanese art  of bringing seasons into everyday life.
「しつらい」とは古来より日本で大切にされてきた季節を日々の暮らしに取り入れる文化です。と、私はこの日お話しました。そして、あの日をみなさんと存分に楽しんで、それから数日経って、私はこのレイチェル・カーソンさんの言葉をお借りするならば、「しつらい」とは日本人が暮らしの中で編み出した、一人一人が「センス・オブ・ワンダー 」を生涯忘れないための。人が自然という源泉から遠ざからないための一つの智恵だったのではないかと感じています。これってすごいことじゃない?
 
 私は改めて「しつらい」というものの底力を気づかせてくれた子どもたちに心から感謝しています。そして、この機会をくれたLittle artist league のMioko MochizukiさんそしてL umiko harmonyさん 本当にありがとう◎
 私はこれからも、集まってくれる子どもたちそして大人たちと共に、しつらいというものを通して、その時を存分に楽しみながら、この世界をセンスオブワンダーで溢れさせたいと思います。

 今を生きる一人一人が自然という力の源泉としっかり繋がり 自分の人生を自分のものとして 生きられるように。 彼らが愛と平和に満ちた今よりもっと素敵な世界を未来へと繋げることができるように。
  そう。私がゆったりおったりの森で繰り広げる一つ一つの営みは ささやかだけれど、でも壮大な、 過去現在そして未来の命へ向けた平和活動なんです。 

 100年後、1000年後の森はどんな色が織り込まれているかな。。。どんな風が吹いているだろう。。。そんなことを思いながら。。。
 
旧暦 如月14日

2018.3.21 自然の理りに小さき人は素手で触れる◎

photo by risa kazama
   嵐と共に咲き出したハクモクレンも今や満開。つくしもにょきにょき生えて。たんぽぽの黄色が爽やかに明るい◎どういうわけだか、下の子はたんぽぽが咲いているのを見ると、一山を越えてもそのお花のそばまで行きたがる。それは、もう歩き始めた1歳くらいからかわらないね◎

 
 ついに春分を迎えました◎それぞれのタイミングでそれぞれの花がそれぞれの場所で芽生え、そして花を咲かせる。太陽と地球。そして私。せいのっと息を合わせて、また新しい一歩を踏み出す。

 
 そんな節目なので私も、小さい人たちと共に育ち共に読み合ったあたたかい記憶がいっぱい詰まった本の並ぶ本棚から、二十四節気の節目に立ち返りたい本をセレクトして、「ゆったり文庫の本棚」として、ご紹介することにしました。
 
 思い立ったが吉日ということで、今日早速春分に読みたい一冊。として選んだのは、 
「フィボナッチ 自然の中にかくれた数を見つけた人」
ジョセフ・ダグニーズ 文  ジョン・オブライエン 絵  渋谷弘子 訳
さ・え・ら書房 


 誰しも衝動的に、どんな障害があろうとも、そうせずにはいられない。そんなこと。そのタイミングがあるのですよね。とくに小さい人は、その衝動に突き動かされて、大人には苦行のようなことも嬉々として、いとも容易くやりきって。あっという間に大きくなっていく。。。

photo by risa kazama
 実はこの本、子どもがはまるタイミングはピンポイント、どの子にでも受けるというわけではありません。でも、その子のその時!にはすごくはまる。ただただ数を数える。ただひたすらに。目に見えるものを、かたっぱしから。もくもくと数える。そういう時さりげなく、本棚に置いておいてあげたい。そんな本。
 
 この本は、大人が読むとまた違った驚きと感動のある本です。忘れかけていたこの世界のありとあらゆるいのちの不思議や神秘といったもの。そんなものの存在に気づかされぞくっとする。そうした目であたりを見回すと、まさに目の前の小さい人のなかに、大いなる自然の神秘を見せつけられ、ぞくぞくっとする。
 
 レイチェル・カーソンが、著書「センス・オブ・ワンダー」で子どもたちの世界にあるといった、「澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力」そして「センス・オブ・ワンダー = 神秘さや不思議さに目をみはる感性」が。小さい人の中には羨ましいほどあふれている◎
「センス・オブ・ワンダー」
レイチェル・L.カーソン 著
新潮社
 羨望の眼差しで子どもの冒険に着いていくと、小さい人は自然の理りに素手で触れ感じて、この世界まるごとをずんずん手中に納めていることに気がつきます。

photo by risa kazama
 今ここで起こることは、みんな何かと繋がっているということ。みんな何かに影響を与え、与えられ、その作用にはいくつかの誰が定めたとも知れぬ理りがあるということ。
 
 そんなことに気づかされたら、もうどうしたって、目の前の小さな人の中に広がる大いなる自然から目が離せない。そんな風になってしまうのです。

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旧暦 如月5日

2018.3.10 ぽかんのあとさき◎

photo by risa kazama
 今週は長引く雨に、強い風。20度で暑いくらい!と思った翌朝には2度!ひえ〜っ!といった感じでしたが、ようやく落ち着いてきましたね◎ほっ◎みなさんいかがお過ごしでしたか?

 
 私は大振れに振れる春にぶんぶん振り回され、まとまっていたはずのものが突風に吹き飛ばされ、ぐるんぐるんにかき混ぜられるかのごとく、しばし混沌の海に身を任せておりました。
 
 頭も身体も一時フリーズ。ついついぽかんっとしてしまって、心ここにあらず。なにひとつまとまらない。。。ただその混沌のなかにも、きらっきらっとすごく美しく光るものが見えて。すっきりまとまらない気持ち悪さと、何か素敵なものが生まれてきそうなわくわくとが入り混じったなんともいえない時でした◎
 
 まあ。春はこんなもんだ。という、半分諦めと、春ってすごいなあ。なんて。むしろ畏怖の念まで感じながら◎
 
 それがあら不思議。風がおさまると心もすっかり静かになって、ゆっくりと平静を取り戻しつつあります。季節もそして私も、こうしてまた一つ前へと歩みを進めるのですね◎ほんと。自然ってすごいなあ。。。
 
 そんなこんなで、ぽかんとしている間に、すっかり日が経ってしまいましたが、実は先週末は春爛漫のくるりん畑で、のんびりしてきました◎
 

photo by risa kazama

 頭上には満開の梅の花。きらきらの太陽に光ってる。あっちでもこっちでも、うふふ。くすくす。。。かわいい野の草花の笑い声。それにつられてうきうきとお外にでてくるのは、私だけではなくて(!)てんとう虫やクモやアリも◎そんな彼らと、みんなも結構うきうきだね〜◎なんて話してきたのです。
 なんと穏やか。。。春霞。。。はあ〜〜〜〜◎

photo by risa kazama
photo by risa kazama
photo by risa kazama
 

 耕さない畑の2度目の春、地中から這い出してきた虫たちの表情が例年より優しげに見える。耕していないのに、土がやわらかいんだよね。(本当は耕していないから。やわらかいのか。)
 今年のくるりん畑は、種まきももちろんするけれど、この耕さない畑に去年降り立ったコボレダネが、どこでどのように芽を出すか、じっくりゆっくり楽しみたい◎と思っています◎

photo by risa kazama

 人も自然も、心を込めて観察。時に探索。そして対話です◎
 くるりん畑の新しい一巡りも始まるよ〜◎
 

photo by risa kazama
 

 ・・・その翌日から泳いだ泳いだ春の嵐。
 
 そんな私がぽかんの間に唯一したこと。
 これは、もう本能のようなものかもしれないのですが、春の嵐のゴーッという地鳴りのような地響きのような春の声が聞こえてきたら、ハクモクレンの木のところにとんでいかずにはいられないのです。
 このゴーッはハクモクレンの根っこから入って、上へ上へ突き進み!あの白い花を白い炎のようにヴォッヴォッと咲かせてくれているに違いない。と。
 そして。やっぱり。咲いていました。白い炎◎

photo by yuji kazama

 うん。やっぱり。やっぱりね。
 ほんと。自然ってすごいなあ。。。
旧暦 睦月23日
 

2018.3.1  うららかな春の陽がゆれる◎

photo by risa kazama
 今日は大人のためのキセツクラシの会「ひなまつり」の日でした。

 障子越しの春の陽が風に揺れ、うっとり◎◎◎菱餅やひなあられの桃色、白、若草色はなんでこんなにも私たちをうきうきさせるのでしょう◎◎◎
 
 旧暦では、まだ睦月14日ですが、昨夜どっと降った雨で清められた清浄な空気とその後ぐんぐん上がったお日様のあたたかさで、春気分も盛り上がり◎ご参加いただいたみなさんとひなまつりを身も心も楽しむことができました◎

photo by risa kazama
   今日はみなさんそれぞれに好みのちりめんを選んでいただいて、想いを込めた合わせ貝を作りました。それぞれの選ばれる柄もこだわりの切り取り方も、みなさんそれぞれにとってもすてき◎
photo by risa kazama
 2つの合わせ貝を幸せいっぱいに包まれたお嬢さんお二人に見立てたり◎
 
 桃色のお母さん、若草色のお父さん、薄黄色の息子さん。ひなあられを使って、こそっとこんな風に家族の仲睦まじい姿が表現されていたりするのも、それぞれでなんとも微笑ましい◎
photo by risa kazama

 今回も、笑顔いっぱいのしつらいを通した心の交流のひと時◎平和でした〜◎みなさん本当にありがとうございました◎
 
 次回は、端午の節句の会を4月26日に行います◎どうぞ、お楽しみに〜◎
 
旧暦 睦月14日